近年、「不動産M&A」という言葉を耳にする機会が増えました。通常の不動産売買とは異なり、不動産を所有する会社の株式を売買することで、間接的に不動産を取得するこの手法は、税務面でのメリットや事業の継続性といった観点から注目を集めています。

しかし、いざご自身の不動産法人を売却しようと考えた際、「結局、いくらで売れるのだろう?」という疑問を抱くオーナー様も少なくないでしょう。その答えは、対象となる不動産法人の「株価」、つまり「企業価値」がいくらと評価されるかによって大きく左右されます。

不動産M&Aにおいて、この企業価値評価は非常に重要なプロセスです。適切な評価が行われなければ、せっかく築き上げてきた大切な資産を過小評価され、結果的に"損"をしてしまう可能性も潜んでいます。

私たち不動産M&Aパートナーズは、お客様がこのような不利益を被ることのないよう、不動産M&Aにおける企業価値評価の基本的な考え方から具体的な評価手法、そして不動産保有法人ならではの評価の特殊性、さらにはオーナー様ご自身で企業価値を高めるためのヒントまで、詳しく解説していきます。


不動産M&Aにおける企業価値評価とは?

M&Aにおける企業価値評価とは、対象企業が将来生み出すキャッシュフローや、保有する資産の価値などを総合的に勘案し、その企業にどれくらいの経済的価値があるかを算定するプロセスです。不動産M&Aの場合、保有する不動産の価値が、企業価値を構成する主要な要素となります。

売却価格は、この評価された企業価値をベースに、買い手との交渉によって決定されます。そのため、オーナー様自身がご自身の不動産法人の価値を正しく理解しておくことが、交渉を有利に進める上で非常に重要となります。私たち不動産M&Aパートナーズは、オーナー様がご自身の会社の真の価値を把握し、自信を持って交渉に臨めるよう、客観的かつ専門的な視点から企業価値評価をサポートいたします。


不動産M&Aで用いられる主な企業価値評価手法

企業価値評価にはいくつかの手法がありますが、不動産M&Aにおいて特に用いられることが多いのは以下の2つです。

1. 純資産方式

企業の貸借対照表上の純資産額をベースに企業価値を評価する手法です。純資産額とは、「資産総額-負債総額」で算出されるもので、その企業の「現在の財産」に着目します。

不動産M&Aにおいては、特に不動産の時価評価が重要になります。帳簿上の不動産価格(簿価)と現在の市場価格(時価)には乖離があることが多く、時価に置き換えて純資産を再計算することで、より実態に近い企業価値を把握できます。

  • メリット: 計算が比較的シンプルで分かりやすい。客観性が高い。
  • デメリット: 将来の収益性を反映しにくい。含み損益(簿価と時価の差額)が大きい場合、実態と乖離する可能性がある。

2. 収益還元方式(DCF法を含む)

対象企業が将来生み出すと期待される収益やキャッシュフローを現在価値に割り引いて評価する手法です。不動産事業の安定的な賃料収入や将来的な売却益など、事業が生み出す「将来の価値」に着目します。

特にDCF(Discounted Cash Flow)法は、将来のフリーキャッシュフローを予測し、それを適切な割引率で現在価値に割り引くことで企業価値を算出します。不動産M&Aでは、賃料収入の安定性や物件の稼働率、将来の修繕費、空室リスクなどが評価に大きく影響します。

  • メリット: 将来の成長性や収益性を評価に反映できる。不動産事業の特性をより細かく評価に盛り込める。
  • デメリット: 将来の予測が困難であり、主観的な要素が入りやすい。割引率の設定によって評価額が大きく変動する可能性がある。

実際には、これら単一の手法だけでなく、複数の評価手法を組み合わせたり、類似会社の取引事例などを参考にしたりしながら、多角的に企業価値が算定されます。不動産M&Aパートナーズでは、これらの評価手法を適切に組み合わせ、お客様の不動産法人の真の価値を最大限に引き出す評価を行います。


不動産保有法人ならではの評価の特殊性

不動産を保有する法人の企業価値評価には、一般的な事業会社のM&Aとは異なる特殊性があります。

1. 不動産の時価評価の重要性

前述の通り、保有する不動産の時価が企業価値に与える影響は絶大です。帳簿上の金額だけでなく、現在の市場における不動産鑑定評価額や取引事例に基づいた適正な時価を把握することが不可欠です。私たち不動産M&Aパートナーズは、豊富な不動産知見とネットワークを活かし、精緻な不動産時価評価を行います。

2. 含み損益の考慮

購入時期が古い不動産の場合、取得時の簿価が現在の時価よりも大幅に低い(含み益がある)ケースが多く見られます。この含み益が企業価値にどう反映されるかは、評価において重要なポイントです。

3. キャッシュフローの安定性

賃貸収入が主体の不動産法人の場合、そのキャッシュフローの安定性が評価に大きく影響します。テナントの入居状況、賃料の改定履歴、契約期間、将来の空室リスクなどが評価の要素となります。

4. 減価償却費と税金の影響

不動産は多額の減価償却費が発生するため、税引き後利益が小さく計上されがちです。しかし、キャッシュフローベースで見ると利益が出ているケースも多いため、損益計算書だけでは真の価値を測りきれないことがあります。税効果会計の考慮も必要になる場合があります。不動産M&Aパートナーズは、税務の専門家とも連携し、キャッシュフローの実態を正確に把握した評価を行います。

5. 賃貸借契約の内容

個々の賃貸借契約の内容(賃料、契約期間、更新条件、保証金など)が、将来の収益を左右するため、詳細に確認されます。特に、長期安定的な契約がある不動産は高評価につながりやすい傾向があります。


オーナー様ご自身が企業価値を高めるためにできること

ご自身の不動産法人の価値を最大限に高め、納得のいくM&Aを実現するためには、オーナー様ご自身でできることがあります。私たち不動産M&Aパートナーズは、これらの取り組みを強力にサポートいたします。

1. 不動産の価値を定期的に見直す

保有する不動産の現在の市場価値を把握し、可能であれば不動産鑑定評価を取得することを検討しましょう。これにより、評価の客観性が高まります。

2. 賃貸状況を最適化する

空室率の低減、適正賃料への改定、優良テナントの誘致など、賃貸事業の収益性を高める取り組みは、M&A時の評価に直結します。

3. 会計・税務の透明性を高める

適正な会計処理を行い、不透明な取引や不明瞭な勘定科目をなくすことで、買い手側のデューデリジェンス(詳細調査)がスムーズに進み、信頼性が向上します。税務リスクを事前に解消しておくことも重要です。

4. 契約書類を整備する

賃貸借契約書、工事請負契約書など、各種契約書類の保管状況を確認し、いつでも提示できるように整理しておきましょう。これにより、デューデリジェンスの手間が省け、買い手の安心感につながります。

5. 修繕計画を立て、適切なメンテナンスを行う

建物や設備の適切なメンテナンスは、不動産価値の維持・向上に不可欠です。修繕計画を具体的に立て、実行していることを示すことで、将来のコストリスクが低いと評価されます。

6. 不要な資産や負債を整理する

事業に直接関係のない遊休資産の売却や、不必要な借入の返済など、貸借対照表をスリム化することで、純資産価値を高めることができます。

7. 事業計画を明確にする

将来の賃料収入の見込み、空室対策、新たな投資計画など、具体的な事業計画を言語化しておくことで、買い手は将来の収益性をイメージしやすくなります。


まとめ

不動産M&Aにおける企業価値評価は、単に不動産の価格を測るだけでなく、その不動産が将来にわたって生み出す価値や、法人としての経営状況全体を総合的に判断する複雑なプロセスです。

ご自身の不動産法人の潜在的な価値を最大限に引き出し、納得のいくM&Aを実現するためには、専門知識を持つM&Aアドバイザーや不動産鑑定士、税理士など、信頼できる専門家のサポートが不可欠です。

私たち不動産M&Aパートナーズは、不動産M&Aに特化した専門集団として、お客様一人ひとりの状況に合わせた最適な企業価値評価とM&A戦略をご提案いたします。M&Aは、オーナー様にとって人生で一度きりの大きな決断となるでしょう。ぜひ、この記事を参考に、ご自身の不動産法人の企業価値について深く考察し、最良の選択をしていただければ幸いです。

不動産M&Aに関してお悩みがございましたら、どうぞお気軽に不動産M&Aパートナーズにご相談ください。専門のコンサルタントが親身になってサポートさせていただきます。

投稿者プロフィール

中田清志郎
中田清志郎
シニアアドバイザー
兵庫県立大学卒業後、地方銀行に約10年間勤務し法人新規営業等を担当、その後大手生命保険会社を経て保険代理店勤務。
ファイナンシャルプランナーとしてコンサルティング業務を得意とする。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士