1. はじめに:不動産M&Aを選ぶ「本当の理由」とは?
不動産M&A、特に株式譲渡による不動産取得が注目される理由として、不動産取得税や登録免許税といった税負担の軽減がよく挙げられます。これは非常に大きなメリットです。
しかし、もう一つ、買い手にとって非常に重要でありながら見過ごされがちなメリットがあります。それが、「会社が締結している各種契約や取引関係をそのまま継続できる」という点です。これは、単なる不動産の売買では避けられない、煩雑で時間のかかる事務的なコストを劇的に削減します。
2. 単なる「不動産売買」で発生する5つの事務コスト
通常の不動産売買(物件の所有権のみを移転する方法)では、新しいオーナー(買い手)が物件を取得した後、すべての既存契約を一旦解消し、自社名義で再契約し直す必要があります。
特に収益物件や事業用物件の場合、この手続きは膨大な事務作業となり、事業開始の遅延や、意図しないコスト増を招くリスクがあります。
以下に、不動産売買後に買い手が負う主要な事務コストを挙げます。
① 管理会社との再契約
物件の管理を委託している場合、管理委託契約はオーナー変更により一旦終了します。買い手は、同じ管理会社であっても改めて自社名義で契約を結び直す必要があります。この手続きだけでも、交渉、契約書の確認、印鑑証明の準備などに時間を要します。
② 入居者(テナント)との契約関係
アパートやオフィスビルなどの場合、入居者(テナント)との賃貸借契約自体は原則として新オーナーに引き継がれます(民法上の「賃貸人の地位の承継」)。しかし、以下の事務的な通知や手続きは必須です。
- オーナー変更の通知:入居者全員に対し、賃料の振込先や緊急連絡先が変わる旨を通知し、了解を得る必要があります。
- 保証会社との契約見直し:連帯保証人の変更や保証会社との契約見直しが必要になるケースがあります。
③ 金融機関との取引関係の再構築
売却対象の法人で既に事業性融資を受けている場合、新たなオーナー(買い手)は、自社のメインバンクと別に、その物件に対応する新たな融資や取引関係を築くか、既存の融資を引き継ぐ手続きが必要になります。
④ インフラ・ライフラインの契約変更
電気、ガス、水道、インターネット回線、エレベーターの保守点検契約など、物件に付随するすべてのインフラ・保守契約を新オーナー名義に変更する手続きが必要です。特に事業用物件では、停止期間が発生すると事業に大きな影響が出かねません。
⑤ 許認可・資格の取り直し(事業用の場合)
例えば、ホテル、老人ホーム、特定施設など、行政の許認可を必要とする物件の場合、不動産所有者が変わることで、その許認可を新オーナー名義で取り直す必要が生じることがあります。これは非常に手間と時間がかかるプロセスです。
3. 不動産M&A(株式譲渡)がこれらの問題を解決する仕組み
株式譲渡による不動産M&Aの場合、不動産を所有する法人(会社)そのものを売買します。
法人のオーナー(株主)が変わるだけで、法人という「契約主体」は存続し続けます。これにより、前述の煩雑な事務手続きはほぼすべて不要になります。
| 契約・取引関係 | 単なる不動産売買 | 不動産M&A(株式譲渡) | メリット |
| 管理会社 | 再契約が必要 | 契約継続 | 信頼関係や契約条件を維持 |
| 入居者 | 名義変更・通知が必要 | 契約継続 | 入居者への負担・混乱を回避 |
| インフラ | 名義変更が必要 | 契約継続 | ライフライン停止リスクなし |
| 金融機関 | 新規融資が必要 | 取引継続 | 既存融資の維持や取引関係を承継 |
| 許認可 | 名義変更・再申請が必要 | 契約継続 | 事業継続のリスクを回避 |
Google スプレッドシートにエクスポート
買い手は、法人の経営権を取得したその日から、「既に稼働しているビジネス」をスムーズに引き継ぎ、即座に収益化を図ることができます。契約変更に伴う通知文書の作成、郵送、入居者からの問い合わせ対応といった「隠れた事務コスト」が一切発生しないことは、特に物件数が多い場合や、早期に事業を開始したい場合に、計り知れないメリットとなります。
4. まとめ:時間と手間を本業へ
不動産M&Aは、税制優遇だけでなく、「時間と手間」という非金銭的なコストを最小化できる戦略的な手法です。
煩雑な事務手続きに追われることなく、取得した物件の価値向上やテナントとの関係強化といった「本業」に、経営資源を集中投下できるようになります。
不動産M&Aパートナーズでは、この「契約の継続」によるスムーズな事業承継を含め、お客様のメリットを最大限に引き出すスキームをご提案いたします。不動産M&Aによる物件取得にご関心のある方は、ぜひ一度ご相談ください。




