自民党の新総裁に高市早苗氏が決定し、首相就任が確実となったことで、その経済政策に対する注目が高まっています。高市氏が提唱する「サナエノミクス」が日本の経済全体、そして特に不動産業界にどのような影響を与えるのか、その予測を解説します。


「サナエノミクス」の基本構造と不動産への影響

高市新総裁の経済政策は、故安倍晋三元首相の「アベノミクス」の枠組みを継承・強化したもので、主に以下の二つの柱で構成されています。

1. 積極財政とインフレ期待の醸成

  • 大規模な財政出動:
    • 「危機管理投資」(国土強靱化、防災、エネルギー・食料安全保障など)と「成長投資」(先端技術)を両輪とする「責任ある積極財政」を掲げています。
    • 公共事業や大規模な投資の増加は、建設需要を喚起し、建設関連の不動産業界にはポジティブな影響をもたらします。
  • 金融緩和の継続:
    • 日本銀行に対して金融緩和の継続を求め、物価目標達成を目指す姿勢は、低金利環境の維持につながります。これにより、住宅ローン金利が低水準に保たれ、住宅購入意欲を下支えする要因となります。
  • 景気回復と実物資産への評価:
    • 積極財政による景気回復とインフレ期待の高まりは、実物資産である不動産の価値を相対的に高める方向に作用し、投資マネーが流入しやすくなる可能性があります。この結果、不動産価格の緩やかな上昇が続く土壌となりえます。

2. 外国人による不動産取引への姿勢

  • 規制強化への動き:
    • 高市氏は、安全保障の観点から、外国資本による土地・不動産の取得規制(重要土地等調査法など)に以前から積極的でした。
    • 近年、都心部を中心とした外国人による投資目的のマンション購入が価格高騰の一因となっているとの指摘もあり、今後は外国人による不動産売買に対する監視や規制が強化される可能性があります。
  • 市場への影響:
    • 規制が強化された場合、投機的な海外マネーが一部の不動産市場から遠のき、特に都心の投資用高額物件の取引が抑制され、価格の過熱感に歯止めがかかる可能性も考えられます。

【総評】期待と懸念

高市新総裁の経済政策は、積極的な財政出動と金融緩和の継続という点で、景気と不動産市場に対して概ね前向きなシグナルを送っていると言えます。特に、低金利が維持されれば、住宅購入層にとっては引き続き有利な状況が続くでしょう。

一方で、懸念点としては、財政の健全化との両立や、世界的な金利動向の影響があります。また、外国人規制の具体化によっては、市場の活発さに水を差す可能性も否定できません。

新しい経済政策のもとで、不動産市場がどのように変化していくのか、今後の具体的な施策の発表と市場の反応を注視する必要があります。

【注意書き】

本コラムは、公開されている政策公約やこれまでの発言に基づいた筆者の一参考意見・予測に過ぎません。実際の経済情勢や政策の実行、そして国内外の様々な要因により、不動産市場への影響は大きく変動する可能性があります。投資や不動産の売買に関する最終的なご判断は、ご自身の責任において行ってください。

投稿者プロフィール

松謙志郎
松謙志郎
アドバイザー
神戸学院大学卒業後、大手不動産会社で東京勤務、不動産仲介業務にあたる。
その後、実家の不動産会社で勤務した後に独立、不動産仲介業務を行う。
宅地建物取引士 / 管理業務主任者 / 行政書士