非協力的な株主問題とその解決策について
不動産を保有する会社のM&A(合併・買収)をご検討される際、多くの企業様が、対象不動産の価値や財務状況、法的リスクの精査に注力されます。もちろんこれらはM&A成功の要ですが、私たち不動産M&Aパートナーズ株式会社が過去の経験からお伝えしたいのは、「株主構成」に関する問題もまた、M&Aの成否を大きく左右する重要な要素だということです。
特に、M&Aに前向きでない少数株主様がいらっしゃる場合や、長期間連絡が取れない株主様が存在する場合、M&A手続きは想定以上に複雑化し、最悪の場合、計画そのものが頓挫してしまうケースもございます。
今回は、不動産M&Aパートナーズ株式会社の専門家としての視点から、不動産保有法人のM&Aにおいて生じがちな「非協力的な株主問題」に焦点を当て、その具体的な課題、そしてトラブルを未然に防ぎ、貴社のM&Aをスムーズに成功に導くための対策について詳しく解説いたします。
なぜ株主構成が不動産M&Aの進行を妨げるのか?
不動産M&Aの多くは、対象会社の株式譲渡によって行われます。株式譲渡を円滑に進めるためには、原則として全ての株主様から株式を譲り受けることが理想的です。しかし、このプロセスにおいて、以下のような状況がM&Aの障壁となることがございます。
- 少数株主様の存在: M&Aの最終的な合意形成には、通常、対象会社の取締役会や株主総会の承認、そして売り手側の株主様全員の同意が求められます。たとえ少数の株式しかお持ちでない株主様であっても、買収価格にご不満をお持ちだったり、会社の売却自体にご賛同いただけなかったりすると、株式の譲渡に応じていただけず、M&Aが円滑に進まなくなってしまうことがあります。
- 連絡が取れない株主様・所在不明株主様: 相続などにより株主様が多数に分散している場合や、長期間ご連絡が取れない株主様がいらっしゃるケースも少なくありません。このような状況では、すべての株式譲渡の同意を得ることが極めて困難となり、M&Aの手続きを完了できない事態に陥る可能性がございます。
- M&Aに非協力的な株主様: 株主様が高齢でM&Aの手続きにご理解を示されない、あるいは単純に手続きを煩わしいと感じてご協力いただけないケースもございます。また、感情的な理由や、特定の思惑から意図的にM&Aを妨害しようとされる株主様も存在し得るため、慎重な対応が求められます。
これらの問題は、買い手企業様にとっては「本当に会社全体を取得できるのか」という不確実性を生み、M&Aの実現性やスケジュールに大きな影響を与えてしまうのです。
非協力的な株主問題を解決するための具体的なアプローチ
不動産M&Aパートナーズ株式会社では、M&Aの進行をスムーズにするために、問題となり得る株主様への対策を事前に講じることを強く推奨しております。
1. 丁寧なコミュニケーションと粘り強い交渉
最も基本的ながら、M&A成功の鍵となるのが、非協力的な株主様との丁寧なコミュニケーションと粘り強い交渉です。
- M&Aの目的とメリットを丁寧に説明: なぜ今、M&Aが必要なのか、売却後の会社の展望、そして株主様ご自身にとってのメリット(例えば、適正な価格での株式売却機会)を明確に、かつ透明性を持ってご説明いたします。
- 個別ニーズの丁寧なヒアリング: 株主様がM&Aにご協力いただけない理由を丁寧に伺い、個別のニーズ(例えば、税務上の配慮や、特定の事業への想いなど)がある場合は、可能な範囲で最適な解決策をご提案いたします。
- 専門家からの客観的な説明: 私たち不動産M&Aパートナーズ株式会社は、貴社と連携し、必要に応じて税理士や弁護士などの専門家から、M&Aに関する客観的な情報や法的なアドバイスを提供していただくことで、株主様の不安を解消し、ご理解を深めるお手伝いをいたします。
2. 事前の株式集約(売り手様側の準備)
M&A実行前に、売り手様側で株主構成をシンプルにしておくことが、最も理想的な準備と言えます。
- 相対での株式買取: 会社のオーナー様や経営陣様が、M&Aにご協力いただけない株主様から事前に株式を買い取っておく方法です。これにより、M&A交渉の窓口を一本化し、その後の手続きを円滑に進めることが可能となります。
- 買取価格の妥当性: この際、他の株主様との公平性や、M&Aの対価との整合性を考慮した上で、適正な価格設定が重要となります。
3. 会社法上の制度を活用した「スクイーズアウト」
上記の交渉が難しい場合や、所在不明の株主様がいらっしゃる場合には、会社法で定められた**スクイーズアウト(少数株主排除)**の手続きを検討いたします。これは、非協力的な少数株主様の株式を法的に買い取る、または対価を交付して株主としての地位を解消する制度です。
主なスクイーズアウトの手法には以下のようなものがございます。
- 全部取得条項付種類株式の活用: 全ての株式を会社が強制的に取得できるように、定款を変更して種類株式を導入し、その後、この種類株式を全て取得することで株主様を排除いたします。
- 株式併合: 株式の数を減らす(例:10株を1株に併合)ことで、少数株主様の持ち株を1株未満にし、会社が端株を法的に買い取って排除いたします。この際、株主総会の特別決議(議決権の3分の2以上の賛成)が必要となります。
これらの手続きは、株主総会の特別決議や場合によっては裁判所の関与が必要となり、一定の時間と費用を要します。また、少数株主様の権利保護の観点から、株主様から買取価格の決定を求める訴訟を提起される可能性もあるため、弁護士などの専門家と密に連携しながら、極めて慎重に進める必要があります。 私たち不動産M&Aパートナーズ株式会社が、貴社と共に最適な法務戦略を立案・実行いたします。
4. 事前の情報収集と綿密なデューデリジェンス
買い手企業様におかれましては、M&Aの検討段階で対象会社の株主名簿や定款を徹底的に確認し、少数株主様の有無、その持株比率、過去の株主総会の状況などを詳細に調査するデューデリジェンスが不可欠です。これにより、潜在的なリスクを早期に発見し、適切な対策を講じるための時間を十分に確保できます。
不動産M&Aパートナーズ株式会社がお届けするトラブル回避のノウハウ
- 早期の専門家へのご相談: 株主構成にご不安がある場合は、私たち不動産M&Aパートナーズ株式会社へぜひご相談ください。M&Aの専門家として、貴社の状況に合わせた最適なアプローチをご提案し、弁護士や税理士といった提携専門家と連携して、多角的なサポートをご提供いたします。
- M&Aスキームの柔軟な検討: 株主問題の状況によっては、株式譲渡以外のM&Aスキーム(例:事業譲渡など)を検討することも有効な場合があります。貴社の状況に最適なM&Aスキームを共に探求いたします。
- 株主間契約の確認: 過去に株主様間でM&Aに関する取り決め(優先交渉権、売却義務など)がなされている場合があるため、株主間契約の有無も丁寧に確認させていただきます。
まとめ
不動産保有法人のM&Aは、対象となる不動産そのものだけでなく、その背後にある「会社の株主構成」という要素が、M&Aの成功を大きく左右する重要な鍵となります。非協力的な少数株主様や連絡の取れない株主様の問題は、M&A手続きを停滞させ、予期せぬ時間やコストを発生させる可能性があります。
しかし、これらの問題は、事前の綿密な情報収集、私たち不動産M&Aパートナーズ株式会社のような専門家との強固な連携、そして株主様への丁寧なコミュニケーションや、必要に応じた会社法上の制度の活用によって、乗り越えることが十分に可能です。
貴社の不動産M&Aを円滑かつ成功裏に導くためにも、株主問題に対する事前の準備と、戦略的な対応は不可欠です。もし、貴社が不動産M&Aをご検討されており、株主構成にご懸念がおありでしたら、ぜひ一度不動産M&Aパートナーズ株式会社にご相談ください。私たち専門家が、貴社に最適な解決策をご提案し、M&Aの実現まで強力にサポートいたします。
投稿者プロフィール

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シニアアドバイザー
兵庫県立大学卒業後、地方銀行に約10年間勤務し法人新規営業等を担当、その後大手生命保険会社を経て保険代理店勤務。
ファイナンシャルプランナーとしてコンサルティング業務を得意とする。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
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