近年、国内外の機関投資家やファンドが、日本の不動産、特に東京のオフィスビルやマンションを大規模に取得しているというニュースをよく目にします。
なぜ今、彼らが日本の不動産に注目しているのでしょうか?
その背景には、一見すると無関係に見える【消費者物価指数(CPI)】の上昇が深く関係しています。

消費者物価指数(CPI)と不動産:なぜ物価上昇は家賃に影響するのか?

不動産M&Aを検討する上で、日本の経済動向を把握することは非常に重要です。
最近のニュースで「消費者物価指数(CPI)の上昇」という言葉を耳にする機会が増えました。
この指数が私たちの生活、特に不動産にどのような影響を与えるのか、分かりやすく解説します。

消費者物価指数(CPI)って何?

消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)とは、私たちが普段購入するモノやサービスの価格変動を測るための指標です。経済の「体温計」とも呼ばれ、総務省が毎月発表しています。この指数を見ることで、インフレ(物価上昇)やデフレ(物価下落)の状況を把握できます。

指数は、食料品、衣類、交通費、医療費、そして家賃など、私たちの家計に関わる様々な項目で構成されています。

なぜ「生鮮食品・エネルギーを除く」指数が重要なのか?

ニュースでは「生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数」がよく取り上げられます。これは、価格変動の大きい特殊な要因を除外することで、物価の基調的な動きを正確に把握するためです。

  • 生鮮食品: 天候不順などによって価格が大きく変動しやすいです。
  • エネルギー: 原油価格の国際的な変動など、外部要因で価格が大きく動きます。

これらの項目を除いて分析することで、一時的な要因に惑わされず、物価の「本当の傾向」を判断することができます。これが、金融政策の判断材料として重視される理由です。

物価上昇が不動産に与える影響

物価上昇は、不動産市場に以下のような影響を与えます。

  1. 家賃の上昇: 物価が上昇すると、建物の修繕費や管理費なども上がります。オーナーはこれらのコスト増加分を補填するため、家賃を値上げする傾向にあります。また、インフレ下では「モノ」の価値が上がると考えられるため、現金よりも不動産を保有したいという需要が増え、賃貸市場の需要も高まり、家賃の上昇圧力となります。
  2. 不動産価格の上昇: 物価が上がると、不動産を新しく建てるための建築費や人件費も上昇します。これにより、新規の物件価格が上がり、既存の不動産の資産価値も連動して上昇しやすくなります。
  3. インフレ対策としての不動産の魅力: 現金はインフレによって価値が目減りしますが、不動産は物価上昇に合わせて資産価値や家賃収入が上がるため、インフレに強い資産と考えられています。このため、国内外の投資家が、インフレリスクを回避するために日本の不動産に注目し、積極的に投資する動きが活発になります。これが、最近外資が日本の不動産を大規模に購入している背景の一つです。

外資から見た日本の不動産市場の魅力

これらのインフレ要因は、日本の不動産市場に特別な魅力を与えています。

  • 安定した政治・経済: 日本は政治・経済が安定しており、長期的な投資先として信頼性が高いと評価されています。
  • 円安: 外資から見れば、円安は日本の不動産を「割安」に取得できる絶好の機会です。
  • 物価上昇と賃料上昇の可能性: 長らくデフレが続いてきた日本でも、物価上昇が顕著になってきました。外資は、今後の経済成長と物価上昇に伴う賃料収入の増加、そして不動産価値のさらなる上昇に期待を寄せています。

まとめ

外資が日本の不動産に大規模な投資を行う背景には、単なる円安だけでなく、日本の安定した経済基盤と、インフレによる不動産価値の上昇という将来性を見込んでいることがあります。不動産M&Aにおいては、このようなマクロ経済の動向を読み解くことが、最適な戦略を立てる上で不可欠です。消費者物価指数という指標は、まさにその羅針盤となる重要なデータと言えるでしょう。


不動産M&Aパートナーズ株式会社は、市場の動向を深く分析し、お客様のM&A戦略をサポートいたします。お気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

松謙志郎
松謙志郎
アドバイザー
神戸学院大学卒業後、大手不動産会社で東京勤務、不動産仲介業務にあたる。
その後、実家の不動産会社で勤務した後に独立、不動産仲介業務を行う。
宅地建物取引士 / 管理業務主任者 / 行政書士