「清算」か「M&A」どちらを選択するかで手残り金額に大きな差が!?
法人で保有されている不動産の売却をご検討のオーナー様へ。その際、「会社を清算して不動産を売却する」方法と、「不動産M&Aで法人そのものを売却する」方法のどちらが、最終的な手残り金額を最大化できるかご存知でしょうか?
それぞれのケースで発生する税金と、最終的な手残り金額への影響について詳しく解説いたします。
ケース1:法人で保有する不動産を売却し、会社を清算する場合
このケースでは、主に「法人における不動産売却時の税金」と「会社清算時の税金(株主様への課税)」の2段階で税金が発生いたします。
1. 法人における不動産売却時の税金
- 法人税等(法人税、法人住民税、法人事業税): 不動産を売却して利益(売却益 = 売却価格 - 簿価 - 諸費用)が出た場合、その売却益に対して法人税等が課税されます。税率は法人の種類や所得金額によって異なりますが、実効税率で約20%〜35%程度です。長年保有されている含み益の大きい不動産の場合、この法人税等が多額になる可能性がございます。
2. 会社清算時の税金(株主様への課税)
- みなし配当課税(所得税・住民税または法人税): 不動産売却後の現預金など、会社の残余財産が株主様へ分配される際、その分配額から株式の取得費を差し引いた金額(みなし配当)に対して課税されます。
- 個人株主様の場合:所得税(総合課税または申告分離課税、税率最大約55%)と住民税が課税されます。配当控除の適用も検討されますが、税負担は大きくなる傾向にあります。
- 法人株主様の場合:法人税等が課税されます。
手残り金額への影響:
- 不動産売却益に対する法人税等で一度課税され、さらに残余財産の分配時に株主様に対して二重に課税される(法人税等+みなし配当課税)ため、最終的な手残り金額は比較的少なくなる傾向がございます。
- 不動産取得税は、買い手様側の負担となるため、売り手様には直接影響しません。
ケース2:不動産M&Aで法人そのものを売却する場合(株式譲渡)
このケースでは、貴社のオーナーである株主様が、貴社が保有する株式を買い手企業様へ譲渡します。
1. 株主様における株式譲渡時の税金
- 所得税・住民税(譲渡所得): 株主様が株式を売却して利益(譲渡益 = 売却価格 - 株式の取得費 - 諸費用)が出た場合、その譲渡益に対して所得税(復興特別所得税を含む)15.315%、住民税5%、**合計20.315%**の税率で課税されます(申告分離課税)。
- 法人に対する課税なし: 貴社そのものの所有権が株主様から買い手企業様へ移るだけで、貴社が不動産を売却するわけではないため、会社に対して法人税等は原則として発生しません。
2. 不動産取得税・登録免許税
- 不動産の所有者は変わらない(貴社が不動産を保有し続ける)ため、不動産取得税や登録免許税は原則として発生しません。
手残り金額への影響:
- 税金が発生するのは、株式を譲渡された株主様に対してのみであり、税率も20.315%と比較的低く抑えられます。
- 貴社自体に課税が発生しないため、二重課税が回避でき、最終的な手残り金額は多くなる傾向がございます。
税金の違いのまとめと手残り金額への影響
項目 | ケース1:不動産売却&会社清算 | ケース2:不動産M&A(株式譲渡) |
税金発生主体 | 法人、株主様の二段階 | 株主様のみ |
発生する税金 | 法人税等、みなし配当課税 | 所得税・住民税(株式譲渡益) |
実効税率(概算) | 法人税等(約20-35%) + みなし配当課税(個人最大約55%) → 合計で高額 | 株式譲渡益課税(20.315%) |
不動産取得税等 | 買い手様側負担(会社清算とは無関係) | 発生しない |
手残り金額 | 少なくなる傾向 | 多くなる傾向 |
結論として、一般的に、法人で保有されている不動産を売却して会社清算を行うよりも、不動産M&Aで法人そのものを株式譲渡する方が、税負担が少なくなり、最終的な手残り金額が多くなる可能性が高いと言えます。
これは、株式譲渡であれば、貴社内部の含み益が表面化せず、税金が発生するタイミングが株主様の譲渡所得課税に一本化されるためです。
ただし、具体的な税額は、不動産の簿価、時価、含み益の状況、株主構成、貴社の過去の税務状況など、個別の状況によって大きく変動いたします。不動産M&Aをご検討の際は、必ず税理士やM&A専門家にご相談いただき、詳細なシミュレーションと最適なスキームの検討を行うことを強くお勧めいたします。
私たち不動産M&Aパートナーズ株式会社は、オーナー様の不動産M&Aを税務面からも強力にサポートいたします。どうぞお気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール

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執行役員 COO
関西大学卒業後、大手不動産仲介会社にて不動産仲介業務を経験、その後一般事業法人の不動産部門にて収益物件の購入、開発、管理等を担当。
また不動産ファンドでのファンド運営にかかわり、ゲームソフト会社の関連不動産会社の代表を経験。自身でも不動産管理会社、不動産仲介会社を経営するなど不動産に関する業務全般に精通。
宅地建物取引士 / 公認不動産コンサルティングマスター / 関西大学不動産会副幹事長