デジタル通貨という言葉を耳にする機会が増えましたが、その種類や役割、メリット・デメリットについて正確に理解している方はまだ少ないかもしれません。このコラムでは、デジタル通貨の基礎知識をわかりやすく解説します。
① デジタル通貨の定義
デジタル通貨とは、紙幣や硬貨といった物理的な形を持たず、データとして電子的にやり取りされるお金の総称です。スマートフォンやパソコンを使って、オンラインでの決済や送金が可能です。私たちが日常的に利用しているクレジットカードや電子マネーも広義のデジタル通貨に含まれますが、ここでは特に「新しい技術に基づいたデジタル通貨」に焦点を当てて解説します。
② デジタル通貨の意義とメリット・デメリット
デジタル通貨は、私たちの経済活動に大きな変化をもたらす可能性を秘めています。
メリット
- 利便性の向上: いつでも、どこでも、スピーディーに送金や決済ができます。特に国境を越えた取引では、時間や手数料を大幅に削減できる可能性があります。
- コストの削減: 現金の製造、輸送、保管にかかるコストを削減できます。
- 金融包摂の実現: 銀行口座を持たない人々でも、スマートフォンさえあれば金融サービスを利用できるようになり、経済活動に参加しやすくなります。
デメリットとリスク
- セキュリティリスク: ハッキングや詐欺、サイバー攻撃による被害に遭う可能性があります。
- プライバシーの問題: 取引履歴がデータとして残るため、プライバシーの保護が大きな課題となります。
- 法整備の遅れ: 新しい技術であるため、法的なルールや規制がまだ十分に整っていない場合があります。
③ デジタル通貨の種類
デジタル通貨は、大きく分けて「法定デジタル通貨」と「民間デジタル通貨」の2つに分類されます。
- 法定デジタル通貨(CBDC): 各国の中央銀行が発行・管理するデジタル通貨です。日本円や米ドルといった法定通貨をデジタル化したもので、その価値は国によって保証されています。
- 民間デジタル通貨: 民間企業が発行・管理するデジタル通貨です。代表的なものに、法定通貨など特定の資産と価値が連動する**「ステーブルコイン」や、特定の管理者が存在しない「仮想通貨(暗号資産)」**があります。ビットコインやイーサリアムなどがこれに当たります。
④ 法定と民間、その違いとは?
法定デジタル通貨と民間デジタル通貨の最も大きな違いは、「発行主体」と「信頼性」にあります。
- 法定デジタル通貨(CBDC)は、国が発行・管理するため、その価値は国が保証します。万が一、発行元の企業が破綻しても、その価値が失われることはありません。
- 民間デジタル通貨は、民間企業や特定のコミュニティによって管理されます。そのため、発行元の企業の信用や、市場の状況によって価値が変動する可能性があります。特に仮想通貨は、価格変動が非常に大きいという特徴があります。
法定デジタル通貨は、私たちが現在使っている現金と同じように、国がその価値を担保することで、経済全体の安定を保つ役割を担います。一方、民間デジタル通貨は、特定のサービスや目的のために活用されることが多いです。
⑤ なぜビットコインは価格変動が激しいのか?
ビットコインやイーサリアムといった仮想通貨(暗号資産)の価格が大きく変動するのには、いくつかの理由があります。
1. 法定通貨のような「裏付け」がない 日本円や米ドルのような法定通貨は、国の信用がその価値を裏付けています。一方、ビットコインには、国や中央銀行による価値の保証がありません。その価値は、投資家や利用者が「将来的に価値がある」と信じること、つまり市場の需要と供給のバランスだけで決まります。
2. 投機的な側面が強い ビットコインはまだ歴史が浅く、その将来性や実用性について不確実性が高い状態です。そのため、多くの人が将来の値上がりを期待して購入する投機的な目的で取引されています。良いニュースが出れば価格が急騰し、悪いニュースが出れば急落するといった、投資家の心理に大きく左右される傾向があります。
3. 供給量が限定されている ビットコインの発行量には上限(約2,100万枚)が定められています。供給量に限りがあるため、需要が増加すれば、価格はより大きく上昇しやすくなります。法定通貨のように、景気に応じて中央銀行が発行量を調整するような仕組みがないため、需給バランスの変動が直接的に価格に反映されやすいのです。
4. 独自の価値を持つ「非中央集権性」と「希少性」 利便性や流動性だけでなく、ビットコインは**特定の国や企業に管理されない「非中央集権性」**と、**発行枚数が限られる「希少性」**という、法定通貨にはない独自の価値を持っています。これにより、政治・経済の不安定な国における価値の保全手段や、インフレヘッジ(インフレ対策)としての需要が高まっているのです。
まとめ
デジタル通貨は、その種類によって仕組みやリスクが大きく異なります。特に、民間デジタル通貨であるビットコインは、「通貨」というよりは「デジタル資産」としての側面が非常に強く、その価値は需要と供給のバランスによって大きく変動することを理解しておく必要があります。それぞれの特徴を正しく理解することが、安全に利用するための第一歩と言えるでしょう。
投稿者プロフィール

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アドバイザー
神戸学院大学卒業後、大手不動産会社で東京勤務、不動産仲介業務にあたる。
その後、実家の不動産会社で勤務した後に独立、不動産仲介業務を行う。
宅地建物取引士 / 管理業務主任者 / 行政書士
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