私たちがよく耳にする「海外の不動産価格は高い」という話。特にオフィス用不動産においては、価格だけでなく賃料水準も非常に気になるところです。一般財団法人日本不動産研究所が発行した「国際不動産価格賃料指数(2025年4月現在)」のレポートによると、日本のオフィス市場には興味深い特性があることがわかります。
価格水準と賃料水準の比較
レポートの「オフィス/都心地区(CBD)/最上位のオフィス価格水準の比較」を見ると、東京の丸の内・大手町地区の最上位オフィス価格を100.0とした場合、香港が187.5と最も高く、ニューヨークは42.0、ロンドンは62.5となっています。このことから、日本のオフィス価格は、ニューヨークやロンドンと比較して相対的に高い水準にあることが示されています。
一方で、「オフィス/都心地区(CBD)/最上位のオフィス賃料水準の比較」では、東京の賃料指数を100.0とした場合、香港が218.2、ロンドンが153.1、ニューヨークが125.8となっています。このデータは、日本のオフィス賃料が海外の主要都市に比べて相対的に低いことを示唆しています。
なぜこのような状況が生まれるのか?
通常、不動産価格は賃料収入に連動して決まるため、価格が高ければ賃料も高いはずです。しかし、このレポートが示すような「価格は高いが賃料は相対的に安い」という状況が生まれる背景には、以下のような要因が考えられます。
- 長期契約と市場の需給: オフィス賃料は一般的に長期契約で固定されるため、市場の価格が短期間で急騰しても、賃料がすぐに追いつくわけではありません。賃料は価格以上に、空室率などの需給バランスの影響を強く受けます。
- 投資家の期待: 不動産投資家は、賃料収入だけでなく、将来的な資産価値の上昇や売却益も期待して投資を行います。日本の超低金利環境では、不動産が他の金融商品と比較して魅力的な投資先となるため、価格が上昇しやすくなります。価格の上昇に賃料が追いつかなくても、投資家は将来のキャピタルゲイン(売却益)を見込んで投資を続けることがあります。
結論
レポートのデータは、日本のオフィス用不動産が価格水準と賃料水準の両面で国際市場と異なる独自の特性を持っていることを明らかにしています。これは、日本の不動産市場が単なる賃料収入だけでなく、長期的な資産価値の上昇を期待した投資の対象となっていることを示唆していると言えるでしょう。
参照元:一般財団法人 日本不動産研究所 「第24回 国際不動産価格賃料指数(2025年4月現在)」
投稿者プロフィール

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アドバイザー
神戸学院大学卒業後、大手不動産会社で東京勤務、不動産仲介業務にあたる。
その後、実家の不動産会社で勤務した後に独立、不動産仲介業務を行う。
宅地建物取引士 / 管理業務主任者 / 行政書士
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